しじみの文化
ご存じですか?しじみ四方山話(よもやまばなし)
古くから日本人の身近にあったしじみは、食材として用いられるだけでなく、川柳や俳句などの題材としても取り上げられてきました。しじみが登場する川柳や俳句、ことわざやしじみにまつわるエピソードなどをご紹介します。
日本人とのかかわりは遥か万葉の時代から
万葉集 巻第六 雑歌 997 作者不詳
住吉の粉浜のしじみが殻を閉じて開けようとしないように、心に秘めたまま恋い続けるのだろうか
7世紀後半から8世紀後半ごろに編まれた我が国最古の和歌集・万葉集に、早くも「しじみ」は登場します。雑歌(ぞうか)とは「くさぐさのうた」の意味で、公的な意味を持つ宮廷関係の歌、旅で詠んだ歌、自然の風物を愛でる歌などのことです。作者はわかりませんが、固く殻を閉ざしたしじみに、自分の秘めた恋心を託したのでしょう。
しじみの効能を経験から知っていた江戸庶民
江戸の川柳
「黄色なつら」とは黄疸、つまり、肝臓を悪くしていることを表しています。「黄色な」「こんじきの」「黄色い」も同様ですが、当時は黄疸になったら、しじみを煮出した汁を冷まし、全身に浴びると治るといわれていたそうです。実際は浴びても効果はなかったでしょうが、江戸時代にすでに、しじみが肝臓に良いことが知られていたことがわかります。
しじみ川柳応募作品
しじみの身は食べるもの?食べないもの?
江戸の川柳に「たくさんに 箸が骨折る しじみ汁」という句があります。身が小さいしじみを食べるには、箸を何度も動かさなければならないということですが、太宰治の『水仙』という小説には、しじみの身をせっせと食べる主人公を見て、お金持ちの奥さんが驚くという場面が登場します。しじみは出汁をとるためのもので、身は食べる物ではないということらしいのですが、しじみの身には鉄分が多く含まれるので、貧血が気になる方は身まで食べた方が良さそうですね。
春の季語なのに春以外にも2回旬があるしじみ
「しじみ」は俳句では春の季語で、上記以外にも多くの句に詠まれています。種類によっては、春に旬を迎えるものもありますが、しじみの旬は一般的に年に2回ほどあります。一つは土用(7月下旬頃)の頃に出回るしじみで、「土用蜆は腹薬」ということわざもあり、厳しい夏の暑さに負けない体力を養う食べ物とされてきました。もう一つは、産卵を終え、越冬のために栄養を蓄える厳寒期のしじみで、身が大きく食感もぷりぷりです。