健康コラム

沈黙の臓器・肝臓についての勉強

肝臓について

ご存じですか?無口な働きもの・肝臓の機能!

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肝臓は体の中で最も大きな臓器で、その重さは個人差もありますが、約1,200gもあります。
栄養の代謝や有害物質の解毒など、生命の維持関わる重要な役割を担っています。
手術などで80%切除されても、約4ヶ月程度で元の大きさに戻り、機能も回復するほどの再生能力があります。
肝臓病などで肝細胞が破壊されても、自己修復する為、自覚症状が出た(修復が追いつかない)ときには、病状が進行してしまっていることも多くあります。このような自己修復作用の強さによる症状のあらわれにくさから、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。

代謝
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食物の栄養分を各部位が必要とする形に変換。
食物の栄養分はそのままのかたちでは利用できないため、胃や腸でいったん分解されたのち、肝臓に送られます。そこで体の各部位が必要とする形に変えられてから、体の隅々に送り届けられるのです。

解毒
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体に紛れ込んだ有害物質を分解して無毒化。
栄養素とともに体内に紛れ込んだ食品添加物などの有害物質を分解し、無毒化する「解毒」の働きをしています。薬やアルコールなども、体にとっては有害物質の一種なので、摂りすぎると肝臓の負担が増してしまいます。

調節
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コレステールの7割が肝臓で合成されています。これが悪玉コレステロール(LDL)です。このLDLは胆汁を作る原料となるため、悪玉といっても決して悪いわけではありません。肝臓は悪玉コレステロール(LDL)を各組織に運び、善玉コレステロール(HDL)を回収して調整しています。

分解
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古くなった赤血球などを分解し胆汁を産生。
古くなった赤血球やコレステロールを分解し、胆汁を作るのも肝臓の役割です。その胆汁を十二指腸に流し込んで、食事でとった脂肪の消化吸収を助けたり、老廃物を体外へ排出する働きをします。

貯蔵
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余った栄養素をグリコーゲンに変えて貯蔵。
人間の生命維持に欠かせないエネルギー源・ブドウ糖の「貯蔵庫」の一つが肝臓です。余った栄養素をグリコーゲンに変えて貯蔵しておき、必要なときにブドウ糖にして全身に送り出しています。

体温維持
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エネルギーを発して体温を保つ熱を産生。
これまで説明した5つのようなさまざまな働きを精力的にこなしている肝臓は、多くのエネルギーを発しています。この肝臓が産生する熱が血液によって全身に配られ、人間は体温を保つのに役立っています。

現代人の3人に1人が肝臓になんらかの問題を抱えています!

健康診断で肝機能に異常が発見される人々が年々増えており、今や現代人の3人に1人が肝臓になんらかの問題を抱えています。肝臓を弱める原因は、お酒の飲み過ぎだけではありません。睡眠不足や夜更かし、食べ過ぎやストレスなど、日常生活の中にも、多くの原因が潜んでいます。

あなたは大丈夫?肝機能チェック!
  • 顔や手足がむくむことがある。
  • ほぼ毎日お酒を飲む。
  • たばこを吸う。
  • 疲れやすく、疲れがとれにくい。
  • 運動はほとんどしない。
  • 食事の時間が不規則。
  • ストレスがたまっている。
  • 野菜はあまり食べない。
  • 睡眠が不足気味。
  • 朝食は抜くことが多い。
  • 夜中に何度も目が覚める。
  • 手足の冷えが気になる。
  • 食事の栄養バランスに無頓着。
  • 肩こりや頭痛がひどい。
  • 血液検査で中性脂肪やコレステロールの数値が高い。

1つでも当てはまったら肝機能が低下しているかも…。

生命維持のためにさまざまな働きをする肝臓は非常にタフで、アルコールなどで破壊されても、すぐに修復する優れた再生能力を持っています。ダメージを受けた部分の働きを残った正常な細胞がカバーするため、異常に気づきにくく、修復が追いつかなくなってはじめて症状が現れるので、気づいたときには病気がかなり進行していることもあり、「沈黙の臓器」と呼ばれています。

こんなに怖い!肝臓の病気 原因・症状・治療法

肝臓の疾患にはさまざまなものがありますが、肝脂肪から肝硬変、そして肝癌へと進展する可能性があることが明らかになっています。

脂肪肝とは

肝臓は食事などから得た栄養分などから中性脂肪を作り、その一部を細胞内に蓄えるため、健康な状態でも3~5%の脂肪を含んでいますが、さまざまな原因により処理しきれなくなった脂肪が、過度に肝細胞内に蓄積された状態を脂肪肝といいます。

脂肪肝の原因は主に、肥満、アルコールの摂りすぎ※注1、糖尿病ですが、他の内分泌疾患や代謝性疾患、ある種の薬剤の摂取などが原因になることもあります。症状はほとんどなく、健康診断などの血液検査でAST(GOT)、ALT(GPT)が高値を示すことで、指摘されることが多い疾患です。腹部超音波検査を行うと、脂肪肝は正常な肝臓に比べて白っぽく見え、肝臓内部の血管の見え方なども合わせて脂肪肝と診断されます。

肝脂肪の治療法としては、食べ過ぎ、アルコールの摂りすぎなど、原因となった食生活をやめ、食事療法、運動療法などの生活習慣を改善することが必要となります。

※注1 NASHとは

非アルコール性脂肪性肝炎(Non-Alcoholic SteatoHepatitis:NASHナッシュ)
アルコールを飲まない方でも、脂肪肝から肝硬変、肝癌へと進展する病態が存在します。詳しい仕組みはまだ不明ですが、お酒を飲まなくても、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病などがある方は、注意が必要です。

肝硬変とは

肝硬変とは、長年の炎症により肝細胞の壊死と再生が繰り返された結果、肝臓の繊維成分が線維化※注2 し、硬く凸凹になった状態をいいます。日本ではC型慢性肝炎によるものが最も多く、その他にB型慢性肝炎、アルコール性肝障害、非アルコール性脂肪性肝炎などからも発症します。肝機能が次第に低下すると、黄疸、腹水、食道静脈瘤、出血傾向、浮腫なの症状が現れ、さらに進行すると肝癌などから死に至ります。

肝臓病では、体に必要なエネルギーや栄養素の合成や貯蔵が十分にできなくなり、体全体の栄養状態が悪化して病気の進行につながるため、栄養状態の維持や改善が大切になります。

肝硬変は基本的に元に戻らない病態です。さまざまな症状に応じて対症療法を行いますが、これらは肝硬変そのものを治すことはできず、進行を遅らせたり、症状を和らげることしかできません。末期肝硬変の唯一の根本的治療法は肝移植です。

※注2 線維化とは

線維物質が増えて細胞が固く変化すること。

肝癌とは

肝臓から発生した癌を「原発性肝癌」といい、肝細胞に由来する肝細胞癌と胆管上皮細胞に由来する胆管細胞癌があります。日本では90%以上が前者で、C型肝炎やB型肝炎など、ウイルスが関与する肝炎による慢性の肝障害(肝硬変、慢性肝炎など)からの発生がほとんどですが、アルコール性、非アルコール性脂肪性の肝障害からも起こり得ます。

初期の段階では無症状のことが多く、かなり進行してから、黄疸、腹水、腹痛など肝機能障害に似た症状が現れたり、腫瘍破裂による腹腔内出血から、腹痛、貧血、ショック症状を呈することもあります。
診断は超音波検査、CT、MRなどによる画像診断が中心ですが、αフェトプロテイン(AFP)という血液中の腫瘍マーカーも利用されます。治療は、肝切除手術が最も根治性が高いとされていますが、肝障害の程度や、癌の大きさや数、位置によって手術ができない場合は他の療法がなされます。

こうした病気は肝臓疾患の一部に過ぎません。病気の種類や進行状況にもよりますが、肝臓疾患を完治させることは難しく、食事制限など長期間にわたって、生活が制約されることになります。手術が必要になれば、肉体的のみならず、精神的にも金銭的にも大きな負担を強いられます。
肝臓に異常がないか、健康診断の数値を気にかけるのはもちろん、飲酒や食べ過ぎを控えて肝臓の負担を減らし、肝臓の働きをサポートする食材などを取り入れるなど、日ごろから肝臓をいたわってあげましょう。